タイ視察 2018年8月

2018年8月、養護施設支援の一環として、理事2名がタイ北部チェンマイ郊外にある施設バーンロムサイ(Ban Rom Sai)を訪問しました。
バーンロムサイは、HIVに母子感染した孤児たちの生活施設として、日本人の名取美和さんにより1999年12月に設立されました。

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当時タイではエイズが猛威をふるい、エイズにより両親を失い、さらに自らもHIVに母子感染した子ども達が増加しました。
また、夫から感染し自分の子どもに母子感染させてしまい、自分の死と共に孤児となる子どものことを考えると死ぬにも死にきれないという辛い思いの母親も多くいました。

その頃名取さんは、チェンマイでクッションカバーやカーペットをデザイン・制作する仕事をされていましたが、HIVのワークショップに参加した際に、皆大変な思いをされていることを知りました。
ご主人が亡くなり、さらに差別にあって働く場所がないという話などを聞き、それなら一緒に仕事をしたらいいのではないか、と彼らに制作の委託をし、一緒に仕事をすることにしたのです。

そんな中、ジョルジオ・アルマーニ・ジャパンから「HIV感染者のために使って欲しい」と支援の申し出がありました。
名取さんは「大丈夫、私があなたたちの代わりに育ててあげるから」」という思いで、母子感染した子ども達の為の孤児院を始める決心をされ、国立孤児院から子ども達を迎え入れました。

HIVというのは、感染しても発症しない限り元気で普通の子ども達と変わりなく成長します。しかし、感染した彼らを苦しめたのは社会からの差別と偏見でした。感染経路に関しての正しい知識を持った人が少なく、触ると感染する、近寄るだけで感染するという誤った情報が蔓延し、病と闘うだけでも大変な中、社会からもはじき出され、1980年代後半には社会や家族からも隔絶した生活を送るようになりました。

タイの法律により、18歳を超えた子ども達は施設を出て生活をしなければなりません。
未だに根強くのこるHIV/AIDSに対する差別や偏見の中、進学や就職の選択肢が限られています。そんな中でも子ども達が困難を乗り越え自信を持って生きて行けるよう、好きなこと、得意なことを見つけ、そこから何か職を身につけて巣立っていけるまで、支援が欠かせません。

バーンロムサイでは、ホームの自立運営を目指すとともに、将来子どもたちの職業訓練や職の場となるよう、縫製場・コテージリゾートhoshihana villageなどの事業も行っています。

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今回の訪問では、養護施設で使用するお米や油、トイレットペーパーなどの生活必需品を、施設スタッフの方と一緒にスーパーに出向き、半年分を買い込みプレゼントしました。
また、地域の住人・村の子ども達との交流をはかり、HIV/AIDSへの理解を深め、差別と偏見を失くすことを目指しているとのことから、村の子ども達とサッカーで交流することが出来るよう、「サッカーボールが欲しい」というリクエストにも応えました。

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現在は、HIVに感染しているわけではないけれど様々な事情で孤児となってしまった子ども達や、親と一緒に生活できない子ども達も入園してくるようになり、多様なバックグラウウンドを抱えた子ども達が仲良く助け合って生活しています。

孤児であること、さらにHIVに感染しているという重荷を背負い、差別や偏見に苦しめられた経験も持つ子ども達ですが、バーンロムサイで生活することにより、ここを大きな「家」と感じ「大きな家族」となって安心して暮らしています。
これまでつらい経験をいくつもしてきた子ども達。
ここバーンロムサイで、名取さんを始め多くのスタッフの愛を受け、自らに自信を持ち、いつか自分の好きなこと、得意なことで手に職を持ち、しっかり社会に羽ばたいていってくれることを心から願ってやみません。

バーンロムサイは、社会情勢や経済状況によって左右されがちな寄付に頼らず、自立した運営を目指して事業を行っています。チェンマイのバーンロムサイにある縫製場で作られたオリジナルの製品は、hoshihana villageだけでなく、鎌倉のバーンロムサイジャパンでも販売しています。
また、支援者から寄付していただいたコテージを、リゾートコテージとしてオープンさせたhoshihana villageは、縫製場同様、将来子ども達の職業訓練や仕事場となることを鑑み、その収益をホームの運営に利用しています。

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オリジナルプロダクトの購入、宿泊施設の利用が、自然と支援とつながっていく新しいシステム。
チェンマイに行かれる機会がありましたら、是非、バーンロムサイのhoshihana villageを訪れてみてください。
子ども達の生きるエネルギーに溢れた笑顔に出会えるはずです。

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